日本矯正歯科学会の臨床指導医(旧称:専門医)更新、日本矯正歯科専門医機関の専門医試験などによるウェブサイトの審査が続いたこともあって、未だに症例検索システムが再稼働させられずにおりますが、今月の終了症例として詳しく解説した記事を作りましたので、一症例だけ掲載します。システムは、各患者さんデータの修正が8割がた終了しましたので、GW明けを目途に再開を目指しています。
No.17V-167
- 主な症状:
- 叢生
- 年齢:
- 40歳
- 性別:
- 女性
- 抜歯部位
- 上:
- 8448欠
- 下:
- 85欠 |8
- 主な使用装置:
- FEA
- 治療にかかった費用:
- 70万円
「他院で4年以上治療しているが、治らないので何とかしてあげられないか一度診てほしい」、とお知り合いの一般歯科の先生からご紹介があり、当院に来院されました。
- ≫治療前
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- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
一見デコボコもなくきれいに並んでいるようにも見えますが、「前歯の関係等」の写真を見ていただくと、まったく前歯がかみ合わず、上顎前突・開咬であることがわかります。
さらに患者さんが奥歯のかみ合わせの不具合をずっと訴えていたにも関わらず、十二歳臼歯(7番目)には金具がついておらず、全くコントロールされていませんでした。さらには、抜歯した右下の小臼歯の後ろの大臼歯が前方に倒れてしまっています。 - ≫治療中 ステップ1
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- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
いったん全ての装置を撤去し、しばらく経過観察をして、倒れている歯などの変化をみてから、当院で十二歳臼歯を含む全ての歯に装置を再装着しました。さらに右下と口蓋にアンカースクリューの使用しました。上の中切歯は、当院初診時の段階で重度の歯根吸収が進行していたため、ブラケットをぎりぎりまで装着せず治療をしています。
- ≫治療後
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- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
装置が付いておらずコントロールされていなかった十二歳臼歯は、開咬の治療ではコントロールが必須です。当院での追加治療は2年強が必要でした。
転院されるまでの治療を4年もやっていてこのような状況というのは、矯正治療の最大のリスクは「適切な治療方針立案と治療がなされないこと」と言いたくなります。もちろん、初診時には初診時の状況があったと思いますので後になってから、かつ断言するのは避けますが、「かみ合わせの改善」を請け負ったのであれば、せめて十二歳臼歯のコントロールは試みていただきたいと思います。
※歯科矯正治療による歯の移動による主なリスク(副作用)としては、歯根吸収(歯の根の先が短くなること)や歯肉退縮(歯ぐきが下がること)があります。
※歯を移動する力により、痛みや違和感が出る場合があります。矯正装置の刺激で歯肉の炎症や口内炎が生じる場合があります。
※装置の装着により歯磨きがしにくくなる部位がありますので、不充分な歯磨きにより、虫歯や歯の変色・歯肉炎や歯周炎が発生することがあります。
※歯を動かし終わった後に、リテーナーの使用不足や歯ぎしりなどの癖の影響で、後戻りや新たな不正咬合が出現する場合があります。
※治療期間は症例により異なりますが、乳歯の残っているお子さんの治療の場合、第一期治療で12~24か月、経過観察期間後の第二期治療で12~24か月を要することがあります。
※成人や永久歯がすべて出ている歯並びでの、全体の矯正治療には18~36か月を要します。