今月も終了症例集からおひとりピックアップします。
患者さんは当院の初診時は10歳の小学生女児。一般歯科さんで第一期の矯正治療をしていたのですが、犬歯が歯ぐきの中で右上前歯の歯根(根っこ)にぶつかっていることが判明しました。
通常、大人の歯は自分の上にいる乳歯の根を吸収しながら上がってくるのですが、たまに方向がそれてしまって、乳歯ではなく大人の歯の根を吸収してしまうことがあるのです。
- 10歳
- 性別:
- 女性
- ≫治療前
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- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
右上の前歯2本とも根の1/3以上が吸収されていたため、大急ぎで治療を開始しました。 - ≫治療後
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- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
永久歯が全て出てから治療方針を再検討しました。根吸収により前歯がダメージうけていることも考慮して、すべての歯を残す非抜歯治療で排列を行いました。右上前歯の歯根の吸収は、全長の1/3を超える程度でしたが、なんとかそれ以上の吸収を避けることができました(レントゲン参照)。歯周病に対する耐久性は残念ながら低いと言わざるをえませんが、歯ぐきの健康さえ守れれば、この状態でずっといける可能性も充分あります。
私の所属する日本臨床矯正歯科医会でも、この犬歯による前歯の望まない歯根吸収について報告がなされています。一定の割合で、犬歯がまっすぐはえてこなくて永久歯にぶつかってしまう患者さんがいますので、当院では、ご相談時に怪しいと感じたときには、レントゲン写真を一枚撮影させていただく場合があります。(実費を頂戴します。)
実は今月の症例事例にもうお一人、本来の場所をそれてはえてきた犬歯によって、前歯を2本ダメにしてしまった患者さんも紹介しています。機会がありましたら、そちらもブログ記事にしたいと思います。