終了症例事例から、一ケースピックアップして詳細を解説したいと思います。
患者さんは成人女性で、関西の一般歯科で補綴を含めた全体的な歯科治療を行う上で、前歯~小臼歯部分だけ(補綴前)部分矯正をしていたそうです。
関東への転居に伴い、一般歯科をこちらで探されて、転院されました。しかしそちらの先生から、かみ合わせが不安定で上の前歯が出っ歯になってしまっていることから、矯正専門医を受診して治療方針を再検討するようにいわれたとのことで、当院を探されて来院されました。
No.15V-270
- 44歳
- 女性
- ≫治療前
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右上中切歯は昔抜歯になって、人口の歯がついていました。下の前歯も、でこぼこがあるということで矯正をするにあたって一本抜歯したそうです。
問題なのは、前歯の関係等の写真でわかるように、右側の前歯~小臼歯が上下で全くかみ合っていないこと。奥歯も(移動中とはいえ)かみ合わせが安定していないのに、ブラケットは前歯から横の小臼歯までしか装着されていないこと。
しかし根本的な問題としては、右上の歯の無い部分(人工歯が装着されている)を矯正治療で閉鎖するのか、インプラントなど矯正治療後に改めて人工歯を入れるのかがはっきりしないまま歯が動かされていることです。- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
- ≫治療後
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右上の人工歯を撤去して、そのスペースに横の側切歯を移動していく治療計画に変更をしました。
右下の第二大臼歯も保存が困難ということで抜歯をしましたが、残す歯にはすべてきちんとブラケットを装着して、かみ合わせを安定化させながら歯の移動をしていきました。
歯の本数の関係で変則的な治療ではありますが、歯並びかみ合わせとも、治療の甲斐があるところまでは持ってこれたと思います。- 上顎
- 下顎
- 前歯の関係など
- 右側
- 正面
- 左側
どこまで矯正治療で移動をして、どこからは歯を削ったり補ったり、インプラントをするかの判断は難しいところです。もし一医院で完結できる(一人の先生がすべてできる)ならば、その方が良いこともあるかもしれませんし、その場合は、その先生の頭の中にさえ計画があれば良いでしょう。しかし、そうでない場合、例えば今回のように転院が発生したときは、患者さん側と治療を引き継ぐ後医のどちらもが確認できるように、なんらかの書類を残してほしいものです。
私は基本的には被せたりインプラントをしたりという一般歯科治療は、他の先生にお願いいたしますので、ドクター間の意思疎通が大事であると考えています。今回は右上の前歯の歯根(=土台)を、前後的左右的などこの位置におくべきか細かくディスカッションを行いながら治療を完了しました。